Rory Block “Come In My Kitchen” (The Lady And Mr. Johnson)
2019.06.11
Rory Block “Come In My Kitchen” (The Lady And Mr. Johnson)
最近髪の毛を切りに行く時、美容院(Double/Double Sons)で古いブルーズが流れていることが多いです。若い女性客が多いところなのにと、最初は驚きました。
美容師の山下浩二さんの趣味でかけていたわけですが、山下さんは日ごろから店の若い店員たちに対しても、美容師仲間に対しても過去の素晴らしい音楽を知ることの大切さをよく説いています。ぼくは10代からブルーズに深くのめり込んでいた人間なので、髪を洗ってもらいながらロバート・ジョンスンの1930年代のブルーズを聞いていると妙に落ち着くものですが、女性のお客さんはどんな反応かちょっと(勝手に)心配していました。
しかし、このごろ店内の音楽を選んでいるのが山下さんではなく、スタッフなのだそうです。聞かされているうちに彼ら/彼女たちにもそういう”しぶい”音楽のよさがどうやら浸透してきて、自分から進んで(特に天気のいい日に気持ちよく響くそうですが)かけるようになってきたわけです。
そんな戦前ブルーズの代表格はやはり、ロバート・ジョンスンで、ローリング・ストーンズやエリック・クラプトンをはじめ、彼の歌とギターを褒め称えるロック畑の人たちが多いし、また27歳の若さで毒殺されたという話もあってか、伝説の人物と化しています。
そのロバート・ジョンスンに関する新しいドキュメンタリー映画が作られています。NetflixのシリーズReMasteredの最新作で、タイトルは「A ROBERT JOHNSON STORY」です。
https://www.netflix.com/title/80191049
真夜中の十字路で待ち合わせた悪魔に自分の魂と引き換えにギターの才能を手に入れたという逸話もあります……。
1938年に亡くなった本人の映像は全くなく、彼の先輩に当るサン・ハウスの後の時代の姿は少し出てきますが、この番組でジョンスンを語るのはキース・リチャーズだったり、ケブ・モーだったり、他にボニー・レイトやタージ・マハールやジョン・ハモンドもインタヴューに答えています。
そしてもう一人、珍しく女性で昔のブルーズを研究し、自分で演奏するローリ・ブロックの顔を久しぶりに見ました。ぼくより少し年上で、今年で70歳になる彼女はそうとは思えない元気な姿を見せます。これまでにブルーズの名人たちに対するトリビュート・アルバムを沢山出していて、その中で2006年のThe Lady and Mr. Johnson は高い評価を受けています。
PHOTO:Sergio Kurhajec
Larkin Poeも同じ曲を演奏しています。
ブルーズなんてオヤジの音楽と決めつけている人もいますが、決してそんなことはありませんね。
現在フリーのブロードキャスターとして活動、「バラカン・ビート」(インターFM)、「ウィークエンド・サンシャイン」(NHK-FM)、「ライフスタイル・ミュージアム」(東京FM)、「ジャパノロジー・プラス」(NHK BS1)などを担当。
著書に『ロックの英詞を読む〜世界を変える歌』(集英社インターナショナル)、『ラジオのこちら側』(岩波新書)『わが青春のサウンドトラック』(光文社文庫)、『ピーター・バラカン音楽日記』(集英社インターナショナル)、『魂(ソウル)のゆくえ』(アルテスパブリッシング)、『ぼくが愛するロック 名盤240』(講談社+α文庫)、『ロックの英詞を読む』(集英社インターナショナル)、『猿はマンキ、お金はマニ』(NHK出版)などがある。
2014年から小規模の都市型音楽フェスティヴァルLive Magic(https://www.livemagic.jp/ )のキュレイターを務める。