STYLIST’S VIEW
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サロンワークに作品作り、セミナー講師……美容師として関わる仕事はいろいろあるけれど、そのずーっと手前の自分の心に一番近いところに「カット」があります。本物の「カット」に出会っていなかったら、今の自分はいません。「カット」によってカッコよく変わる人と、その「カット」をしている人のカッコよさ。それを目のあたりにしてゾクゾクした20年以上も前のことを、僕は昨日のことのように覚えています。そこからです。僕がゾクゾクさせる側になりたいと本気で思ったのは。
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僕にとっての「カット」は呼吸
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美容学校を卒業してすぐに勤務したサロンで、当時アシスタントだった僕にオーナーの美容師の先生は、突然「ヴィダルサスーンのコンテストに出てみたら」と言いました。それまでは、東京のサロンで働いているといっても、ファッションや美容業界のこと、また有名美容師さんのことなどまったく知らなかったので(笑)、僕はそのとき初めて、世界的に有名な美容師ヴィダル・サスーンのことを知り、彼のヘアショーの映像を探しました。そして「海外って面白そう!」と思ったのです。
当時は、今のようにネットで簡単にいろいろなことが調べられなかったけれど、僕は、気になったらすぐに調べて、心が動いたら即!行動派。すぐに渡英することにしました。ロンドンではスクールに1年通い、本来なら1年で帰国しなければならないところ、本物の「カット」のカッコよさを教えてくれた人との出会いをきっかけにロンドンに残ることを決めました。僕の美容師人生は、ここで決まりましたね。
当時は、今のようにネットで簡単にいろいろなことが調べられなかったけれど、僕は、気になったらすぐに調べて、心が動いたら即!行動派。すぐに渡英することにしました。ロンドンではスクールに1年通い、本来なら1年で帰国しなければならないところ、本物の「カット」のカッコよさを教えてくれた人との出会いをきっかけにロンドンに残ることを決めました。僕の美容師人生は、ここで決まりましたね。
その後、ロンドンで雇ってくれる美容室を探して朝から夜まで働き、仕事が終わってから仲間たちと将来の話をする日々を送り、その4年後。東京でロンドンの仲間たちがオープンしたサロンが忙しくなってきたこともあって、将来を見通して僕も帰国することになりました。そして独立し、2003年に「VeLO」、2009年に「vetica」をオープンさせましたが、僕はあのころと変わらず「カット」でゾクゾクしたい、させたいと思い続けています。
「カット」は僕にとって呼吸のようなもの。なくなったら、僕が僕でなくなってしまいます。
とはいえ、どれだけ僕が髪を切ることが好きでも、それをお客さまに押しつけてはいけないと思っています。それは「ヘアスタイルを見て!」という髪型だけが主張しているような「カット」はしたくないからです。頭だけに目がいくのではなく、お客さま全体に焦点がいくようなヘアスタイルがつくりたい。街の中にお客さまがいたときに、その街になじんでいながら、すっと素敵な存在感を放っている。それが理想です。そのためにはヘアスタイルだけがひとり歩きしていてはいけない。お客さまを目の前にすると、こんな感じもいいし、ああもしたいといろいろ似合うヘアスタイルが浮かびます。そのいくつものスタイルの中から、お客さまとコミュニケーションをとり、密かに自分の中で闘いながら(笑)、そのときに最善だと思う着地点を見つけたいのです。
「カット」は僕にとって呼吸のようなもの。なくなったら、僕が僕でなくなってしまいます。
とはいえ、どれだけ僕が髪を切ることが好きでも、それをお客さまに押しつけてはいけないと思っています。それは「ヘアスタイルを見て!」という髪型だけが主張しているような「カット」はしたくないからです。頭だけに目がいくのではなく、お客さま全体に焦点がいくようなヘアスタイルがつくりたい。街の中にお客さまがいたときに、その街になじんでいながら、すっと素敵な存在感を放っている。それが理想です。そのためにはヘアスタイルだけがひとり歩きしていてはいけない。お客さまを目の前にすると、こんな感じもいいし、ああもしたいといろいろ似合うヘアスタイルが浮かびます。そのいくつものスタイルの中から、お客さまとコミュニケーションをとり、密かに自分の中で闘いながら(笑)、そのときに最善だと思う着地点を見つけたいのです。
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今回のモデルさんは15歳。学校にきちんと通いつつ、「ダンスをやっているからちょっとだけ悪いコかも?(笑)」と自分のことを分析するぐらい真面目な女のコ。多感な時期の彼女に、どんなスタイルがいいかな?と少し考えて、ベースはアシメトリーのボブにしました。ストレートにしていれば校則にはひっかからないシンプルなデザインでありながら、スタイリングでアレンジをすれば華やかなおしゃれさも生まれる。そして踊ったときはアシメトリーの髪が躍動感を生む。どのシーンでも彼女の輝きが放てるようにこのデザインにしたのです。
HAIR STYLE
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AFTER THE BEAUTY AWAKE
ずっとずっと「カット」に魅了されてきた僕だけれど、いつのころか、それを形として残したいという思いも出てきました。そして、その形とはなんだろう?と考え続けて、最近わかったのは、残したいのは人だったんだ、ということ。その人がその人らしく美容師という人生を楽しむ。そういう人を育てて残したいのだな、と。だから、最近、スタッフが育っているのを感じるとひとりでニヤニヤしてしまっています(笑)。自分が何かをつくってコントロールするのではなくて、僕というフィルターを通しながらも好きに生きている美容師がこの後の世界で生きていると思うだけで、なんだかとても幸せな気持ちになるのです。
鳥羽直泰 VeLO代表
詳しいプロフィールはこちら
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